2015.04.17

インタビュー:みほさん

所属:認知症高齢者介護職

年齢:24歳

セクシュアリティ:パンセクシュアル

インタビュー日:2015年04月14日

みほさん

ミホ

出身歴: 東京都生まれ、東京都育ち。現在は、福岡県在住。

性の多様性を知ることは、わたしの生きづらさを取り除いてくれた

初めて多様な性に出会ったのは、高校2年生のときです。

社会問題や社会的マイノリティを取り上げる授業にて、スピーカーとして多様な性の当事者に出会いました。とても無知で恥ずかしいことに、当時の私は「テレビに出ているオネエタレントのようなひとだけではない」ということを初めて実感しました。

その直後、一緒に授業を受けていた仲の良かった友人から、カミングアウトを受けました。
「身近にいた!」という初めての出会いでした。しかし、その後も家族にもセクマイがいることが発覚。幼いときから一緒にいた家族ですから、どこかで気づいてはいたのですが、授業での出会いや友人からのカミングアウトを受けたことが家族と話すきっかけとなり、言葉にしてもらうことができました。

それからというもの、「わたしってなんなのだろう」という疑問をもち、向き合うことになりました。“女性らしく”育てられ、男性とされるひとに恋をしてきたわたしって…?

大学では、多様な性に関する活動に取り組みました。様々な出会いを経験し、女性であることは強制ではなく、異性愛と言葉を決めつける必要はないと思うことができるようになりました。性の多様性を知ることは、わたしの生きづらさを取り除いてくれました。

 

時間をかけて人と関係性をつくる仕事がしたい

大学在学中に就職活動を行いました。時間をかけて人と関係性をつくっていく仕事がしたいと思い、企業を探しました。そのなかで介護の仕事が候補となりました。
就職が決まったいまの企業は、会社の教育担当が「介護」という言葉への提言をしていました。例えば、街の中で困っているひとへ手を差し伸べることはあたりまえにある光景。しかし、それを施設内で行ったら「介護」と呼ばれる。この両者に、ちがいはあるのだろうか?と。この“あたりまえを”問う姿勢に惹かれました。

のちに、私が働くことになるのが、認知症高齢者が生活する施設です。
認知症は、現代医療において進行を緩やかにできても、治療法はありません。しかし、そのひとの生きやすい環境が整うことで、周辺症状と呼ばれる生きづらさをなくすことができます。その場に暮らすひとたちのための、心地良い環境づくりをしてみたいと思いました。

元々関心があったわけではない介護の仕事でしたが、人事担当者の「この会社で働くことを、夢に進むための糧にしてくれればいい」という言葉にも勇気づけられました。

 

就職活動において、すべての企業で多様な性の話をしました。というのも、大学在学時代、一番力を入れていたのが、多様な性の啓発やセクシュアルマイノリティの居場所作りでしたので、必然的に話すこととなりました。

ほとんどの企業は、私が話すことを追及することなく聞いてくれました。文字通り、追及することなく。関心を持ってくれたなかでも、就職を決めたいまの企業の面接担当の方は、深く掘り下げて聞いてくれ好感を持ちました。

一方で、面接の中では就職に全く関係のないセクシュアルなことを尋ねられたり、セクシュアリティについてのヘイトスピーチも度々聞かれたりと、精神的なダメージも受けましたので、就職活動中におけるカミングアウトはよく考えた上で行うことをお勧めします。

 

プライベートな話しをオープンにできる生きやすさ

入職時はカミングアウトをしていませんでしたが、現在はセクシュアリティをオープンに生活しています。

本社での面接にて採用されましたが、配属は全国に展開している施設です。

私の勤める施設は職員20人に満たない小さな規模です。プライベートな話が筒抜けになりやすいということは、入職してすぐに分かりました。職員が少ないからこそ、機会をみてひとりひとりに話そうかとも思いましたが、新人であった私にとってそんな余裕はありませんでした。日々、精一杯に業務をこなし、カミングアウトにまで労力を割くことができませんでした。

カミングアウトしていないので、異性愛であると決めつけられての会話に居づらさを感じることは多々ありました。又、業界柄か職場の雰囲気なのか、性的なネタで笑いをとることが少なくありませんでした。その中には、オネエネタと呼ばれる、男性職員が女性的な仕草で笑いを取ろうとすることが度々みられました。悲しい気持ちを表現することができず、悔しい気持ちになりました。

 

転機は、入職2年目を前にして起こりました。

様々な事情が重なり、お付き合いをしているパートナーが住む福岡へ転勤をすることとなりました。入職1年目にして転勤の希望を出すことに負い目もあり、悩みましたが、今後のライフプランを考え、移住を決意して希望しました。
その際に、パートナーはトランスジェンダーであることをカミングアウトしました。必要最低限の情報開示をしようと思っているので、先方より尋ねられなかったため私のセクシュアリティについては話さなかったように思います。

パートナーのことをカミングアウトした理由は、転勤した後も入籍することがないこと、生活をともにするパートナーとして職場に情報を開示する機会があると思ったためです。

現在、新しい職場で働いて一年以上が経ち、パートナーのセクシュアリティだけでなく、私のセクシュアリティについても一部のひとにカミングアウトしています。入職して2年経って余裕がでてきたことも大きく影響していると思います。カミングアウトしていなかった以前の職場より、プライベートな話しをオープンにできる生きやすさを感じています。

 

何度もカミングアウトし、時間をかけて分かってもらいたい

一度カミングアウトをしたからといってすべてが変わるわけではありません。

何度話をしても、私のパートナーを「旦那・ご主人」と呼び、「いつ籍をいれるの?」と言われることもあります。折をみて、めげずに何度もカミングアウトしています。

多様な性に関する話題が新聞に載っていると教えてくれる同僚もいて、関心をもってくれているなと嬉しいことも多いです。多様な性の啓発活動は、学生時代より継続しています。そのことを、職員だけではなく、入居者様の家族様にも応援して頂いたりしています。

 

今後としては、パートナーと子どもが欲しいと思っています。そのことを上司に話した時に「女性が家にいるのが一番だからね」と言われたことが、今の気がかりです。家族を作っていくことは、今まで以上に偏見に向き合っていくことだろうと思っています。時間をかけて分かってもらいたいと思っているので、小出しにして話題をふり、考えてもらいたいと思っています。

仕事をする上で、将来の展望はまだ見つかっていませんので、仕事を続けながら探しています。

まずは今の仕事を続けていくこと。その中で、職場内でのセクシュアリティや性別、そのほかの人権に対するヘイトな発言にも日々疲弊していますが、それらを見過ごさずに向き合っていきたいと思っています。それが、入居者様、そして職員にとっても生きやすい環境になっていくと信じています。

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