2016.04.28

【稲葉哲治氏が語る・後編】直撃アンケート!企業はLGBTの就活生をこう考える

こちらの記事に引き続き、この記事では後編として、LGBTキャリア支援セミナー@横浜の第2部:「人事はLGBTの就活をどう感じているの?」の様子をお送りします。

 

 

休憩中も質問の嵐

第1部の後の休憩時間でも参加者から稲葉氏への質問が絶えず、それまでがいかに盛り上がったかを改めて感じさせました。

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質問A:「転職を考えているのですが、中途採用を求めやすい時期はあるんでしょうか?」

稲葉氏:「3、4月あたりだと前年度の新入社員の研修なんかもやりながら新卒の面接をしていて忙しいので、中途まで手が回る企業はなかなかないです。反対にやりやすい時期としては、7、8月以降ですね。ここで夏のボーナスをもらってから退職する社員も多いので、その枠から中途採用があったりします。」

 

質問B:「インターンって実際のところどうなんですか?」

稲葉氏:「インターンの問題って実はすごく大きくて、インターンの種類によっても色々変わってくるんですよね。正直、長期のインターンに比べると1DAYインターン(1日だけのインターン)は人事の評判が微妙なんです…。内部まで入るインターンではないのでそれで何がわかるの?という感じです。なので1週間とか、さらに長期のインターンの方がおすすめです。
インターンをやった会社にそのまま就職する学生は以外と少ないですが、同じ業界の他の企業に行くことはよくあります。企業側も、同じ業界でのインターン経験がある人を頼もしく感じますね。」

 

などなど…他にも具体例や小話を交えながら、1の質問に10答えるような稲葉氏の話術によって明るい雰囲気の質疑応答となりました。

 

企業人事に直撃!「LGBT学生の就職活動についてのアンケート」

第2部のメインテーマ、企業はLGBTの就活をどう感じているのか。稲葉氏はなんとこのセミナーのために、自ら13社の企業の人事にアンケート調査を行って来ました。

業界も金融、飲食、アパレル、メーカー、製造、人材、印刷、広告、旅館など多種多様。それもこれまで弊法人ReBitが関わっていない、つまりLGBTフレンドリーか否か全くわからない会社ばかり。
一体どんな結果になったのでしょうか。

 

面接時の服装が性別に沿っているか、そこまで重視されない

はじめの質問は、LGBTでなくても気になる面接時の服装について。
スーツでなくてはいけないのか、私服で来てと言われた場合どの程度ラフにしていいのか、そしてトランスジェンダーやXジェンダーの場合は、メンズとレディースどちらを着るべきか、といった悩みを多く耳にします。

稲葉氏が作成したアンケートの
「みための性別と異なる服装で面接に行ってもいいですか?」
に対しての回答は、
「良いと思う」が76.9%と圧倒的に多い結果に。
「良くないと思う」、「わからない/どちらともいえない」、「その他」はすべて7.7%でした。

肯定的な回答の理由としては、
「服装は職業能力には関係がないから。」
が最も多く、
「個性があって当然だから。」
「自分が思う、就職活動にふさわしい服装で受ければいいと思うから。」
といったそれぞれの個性を尊重する意見がありました。

その他の回答では、
「個人的には関係ないが会社による。」
「もし不採用になった場合に本人が『服装のせい』と少しでも思うなら避けるべき。」
「事前に知っておきたい。」
といった意見が出ていました。

ReBit代表理事藥師から、「『みための性別』だと個人によって差があるので、『戸籍上の性別と異なる服装でもいいか』も聞いてみたいですね。」とのコメントを受け、稲葉氏はなるほどとうなづき、「次にアンケートをとるときはそうします!」と力強く返答しました。

肯定的な結果はもちろん、稲葉氏のようにLGBTの学生のために意欲的に働きかけていく大人の姿に参加者は胸を打たれた様子でした。

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就活中のカミングアウトのタイミングは大きく分かれる

次の質問は、「LGBT学生が就職活動でカミングアウトをするとしたら、どの段階ですか?」

最も多かった回答は、「エントリーシート提出時」…30.8%
「1次面接」、「2次面接〜最終面接前」、「最終面接」、「内定後」…すべて15.4%
「その他」…7.7%
という結果に。

エントリーシート段階でとの声が多い一方、
「より深くその人の人柄をみる2次面接で話してほしい。」
「経営者などの上層部が出る最終面接で伝えてほしい。」
「内定後に相談してほしい。」
という意見もあり、カミングアウトのタイミングについては人事によってバラつきがありました。

稲葉氏は、
「正解はないけれど、面接官が自分をわかろうとしているかどうかをしっかり見ましょう」
とコメント。

FtMトランスジェンダーであるとカミングアウトして就活をした藥師は、
「LGBTである、だけ伝えられても人事は『それでどうしたらいいんだろう…』とポカンとしてしまうので、LGBTだからこういう経験をしていて強みになっていますだとか、こういう懸念点があるのですが御社のご意見はどうですか?と具体的に言うといいです。不採用だと落ち込むけど、LGBTであることで落ちるような会社なら結局楽しく働けないのかなと思います。」
と自身の経験を元にアドバイスを送りました。

 

LGBTだからという理由では評価はほとんど下がらない

続いて、「LGBTであることで、人事の評価は下がりますか?」という質問では、
「下がらない」…76.9%
「わからない/どちらともいえない」…23.1%
「下がる」と回答した企業はゼロでした。

LGBTであるかどうかよりも、人柄や熱意、能力が重視されることが可視化されました。

 

企業側の懸念点も様々

最後の質問、「LGBT学生を採用することの懸念点があれば教えてください。」では
「トイレや宿泊所が男女別な場合どう対応するべきか。」
「他の社員やクライアントといった周りの理解があるかどうか。」
懸念点として上がったのは、主に男女分けと周囲の理解という二つでした。
「どうするのが一番ハッピーか話し合う場を作りたい。」
「自社ではすでにLGBTの社員がいて活躍しているので、会社側の懸念はない。」
という前向きな意見もありました。

 

LGBTもそうでない人もぶつかる〝就活〟の壁

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本セミナーは、就職活動全体のことを総括した第1部、LGBTに特化した第2部という構成で行われました。

参加者からは、
「本やインターネット上ではなく生で話が聞けたこと、新卒に転職など就職活動全体を絡めて聞けて良かった。」
という感想が出ました。

全編を通して、「焦らなくていい」、「色んな会社をみて自分に合うかじっくり考えてほしい」とあたたかく語りかける稲葉氏の声は、LGBTはもちろんそうでなくてもぶつかる〝就活〟という壁を乗り越える力になっています。

 

(角 亜維子)

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